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SES・人材派遣2026年3月20日

SESの給与の仕組み【2026年版】単価・マージン率・還元率を公的データで検証|還元率チェック5問

SESの給与の仕組み【2026年版】単価・マージン率・還元率を公的データで検証|還元率チェック5問

SESで働いていると「単価は上がったのに給料が変わらない」という場面に出会います。理由は、SESの給与が「単価 × 還元率」という二段構えで決まるためです。ところが還元率には法律で定められた計算式が存在しません。同じ「還元率70%」でも、分母が税込単価か税抜単価か、社会保険料の会社負担分を含めるかで、手取りは数万円単位で変わります。本記事は、SESの給与の仕組みを公的データで検証し、自分の条件を数字で点検できるチェックリストまで落とし込むための実務ガイドです。

この記事で得られること

  • 単価・マージン率・還元率の関係を、計算式と具体例で正確に理解できる
  • 業界で広く引用されている「マージン率約39%」が消費税込みの数値であることと、その補正方法がわかる
  • 無期雇用と有期雇用でマージン率がどう違うかを、公表データで確認できる
  • 労働者派遣法の条文から「なぜSESの還元率はバラバラなのか」を根拠づけて理解できる
  • 面談・条件確認でそのまま使える「還元率チェック5問」が手に入る

1. SESの給与が決まる仕組み——3つの用語を正確に押さえる

まず用語を整理します。ここが曖昧なままだと、条件比較そのものが成立しません。

用語 意味 計算式
単価(月額単価) 所属企業がクライアントから受け取る月額の契約金額 —
マージン 単価から本人の給与を引いた、会社が受け取る差額 単価 − 給与
マージン率 単価に占めるマージンの割合 (単価 − 給与)÷ 単価
還元率 単価に占める本人の給与の割合 給与 ÷ 単価

マージン率と還元率は足すと100%になります。単価70万円・給与42万円なら、マージン28万円・マージン率40%・還元率60%です。

マージンは「中抜き」ではなく、原価が含まれている

マージン部分は会社の利益がそのまま残るわけではありません。主な内訳は次のとおりです。

費目 内容 本人への関係
社会保険料の事業主負担 健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の会社負担分 本人給与の約15%前後に相当する額が別途発生
営業・管理部門の人件費 案件開拓、契約管理、経理、労務 案件を探す機能そのもの
採用費 求人広告費、紹介手数料 直接は無関係
教育研修費 研修、資格取得支援 制度があれば本人に還元される
待機期間の給与原資 案件が切れた期間の給与を払うための積み立て 雇用の安定に直結
会社の利益 — —

したがって「還元率が高いほど良い」とは単純に言えません。還元率が極端に高い会社は、待機期間の給与保証や教育投資の原資が薄い可能性があります。逆に還元率が低くても、待機保証・研修・福利厚生が手厚ければ、実質の待遇は逆転することがあります。判断材料としては、還元率の数字と一緒に「待機時の給与保証の有無」「研修制度の実態」を必ずセットで確認してください。

2. 【重要】公表されている「マージン率約39%」は税込ベースです

SES関連の記事でほぼ必ず引用されるのが、厚生労働省の労働者派遣事業報告書の集計結果です。SESは準委任契約であり労働者派遣とは契約形態が異なりますが、公的に開示されている唯一の対比可能なベンチマークとして参照されています。

最新版である「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(出典:厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表))の数値は次のとおりです(いずれも1人1日8時間換算)。

区分 派遣料金 賃金 マージン率 還元率
全業務平均(令和6年度) 26,257円 16,735円 36.26% 63.74%
全業務平均(令和5年度) 25,337円 16,190円 36.10% 63.90%
情報処理・通信技術者(令和6年度) 34,382円 21,032円 38.83% 61.17%
情報処理・通信技術者(令和5年度) 33,387円 20,430円 38.81% 61.19%

見落とされている注記:派遣料金には消費税が含まれている

同資料の派遣料金の表には「派遣料金は、消費税を含む額の記載である」という注記があります。つまり上記のマージン率は、税込の売上を分母、税抜の給与を分子として計算された数値です。消費税は会社の取り分ではなく預り金ですから、これを分母に含めたままでは実態より高いマージン率が出ます。

消費税率10%として税抜に補正すると、次のようになります。

情報処理・通信技術者(令和6年度) 税込ベース 税抜ベース(補正後)
派遣料金 34,382円 31,256円
賃金 21,032円 21,032円
マージン率 38.8% 32.7%
還元率 61.2% 67.3%

※税抜換算は公表値34,382円を消費税率10%で割り戻した筆者算出値です。公表資料に税抜の数値は掲載されていません。

この差は実務上とても重要です。会社から「業界平均の還元率は約61%です。逆に、その70%が税込単価に対する数値であれば、税抜換算すると77%相当となり、本当に高い水準ということになります。同じ「70%」でも、分母の定義次第で評価が正反対になるのです。

3. 無期雇用のほうがマージンが厚いという逆説

同じ集計結果を雇用期間で分解すると、業界でよく語られる「正社員(無期)だから安心」という言説とは逆の絵が見えます。

情報処理・通信技術者(令和6年度) 派遣料金 賃金 マージン率 還元率
平均 34,382円 21,032円 38.83% 61.17%
うち 無期雇用 34,707円 21,149円 39.06% 60.94%
うち 有期雇用 32,913円 20,485円 37.76% 62.24%

無期雇用のほうがマージン率が1.3ポイント高くなっています。ただし、これは無期雇用が不利という単純な話ではありません。無期雇用では、案件が切れた待機期間中も給与を支払う義務が会社側に発生します。その原資はマージンから拠出されるため、マージン率の差は雇用の安定性を買っている対価と読むのが実務的な解釈です。

重要なのは、この対価が実際に機能しているかを確認することです。無期雇用でありながら待機時の給与が大幅に減額される、あるいは待機が続くと退職を促されるような運用であれば、厚いマージンに見合う保証を受けられていないことになります。契約更新や案件の切れ目に関する扱いはSES契約期間・更新の解説および契約終了時の対応をご確認ください。

4. なぜSESの還元率には統一基準がないのか——条文で確認する

「還元率の計算方法は会社によって違う」とよく言われますが、なぜ違ってよいのかまで説明した情報は多くありません。答えは法律の適用範囲にあります。

労働者派遣には、法定の計算式がある

労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)第23条第5項は、派遣元事業主に対して情報提供義務を課しています(出典:厚生労働省 法令等データベース「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」)。

派遣元事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、労働者派遣事業を行う事業所ごとの当該事業に係る派遣労働者の数、労働者派遣の役務の提供を受けた者の数、労働者派遣に関する料金の額の平均額から派遣労働者の賃金の額の平均額を控除した額を当該労働者派遣に関する料金の額の平均額で除して得た割合として厚生労働省令で定めるところにより算定した割合、教育訓練に関する事項その他(中略)情報の提供を行わなければならない。

出典:労働者派遣法 第23条第5項(厚生労働省 法令等データベース)

条文は、分子(料金の平均額 − 賃金の平均額)と分母(料金の平均額)を明示しています。計算式そのものが法律で定義されているため、派遣事業では会社間で数値を比較できます。

SESは準委任契約なので、この条文の適用外

SESの契約形態は民法上の準委任契約であり、労働者派遣ではありません。したがって第23条第5項の情報提供義務は及ばず、還元率の算定式も、開示義務も存在しません。会社ごとに次の点がバラバラになるのは、法律上の必然です。

  • 分母を税込単価にするか税抜単価にするか
  • 分子(本人への還元額)に社会保険料の会社負担分を含めるか
  • 交通費・通信費などの実費を還元額に含めるか
  • 賞与の原資を還元額に含めるか
  • 待機期間中の給与コストを控除してから計算するか

この5点はすべて、還元率の数字を数ポイントから十数ポイント動かします。「還元率80%」という広告を見たときに確認すべきなのは、80という数字ではなくこの5点の定義です。

参考:派遣事業でも2割強は公開していない

なお、法定の開示義務がある派遣事業でも、公開状況は完全ではありません。前掲の令和6年度集計結果では、報告書を提出した43,812事業所のうち、インターネットでの情報提供を行っているのは33,942事業所(77.5%)でした。書類の備え付けは20,405事業所(46.6%)、その他が1,455事業所(3.3%)です(複数の方法を併用している事業所があるため、合計は100%を超えます)。約2割強はインターネット上で確認できないことになります。「調べればわかる」という前提は、派遣であっても万能ではありません。

5. 還元率チェック5問——面談・条件確認でそのまま使えるリスト

前章の5つの論点を、そのまま質問の形にしたものが次のチェックリストです。条件提示を受けたとき、または面談の逆質問で使えます。

# 質問 確認したいこと 回答による差の目安
1 「その還元率の分母は、税込単価ですか、税抜単価ですか」 消費税の扱い 約6〜7ポイント
2 「還元額に、社会保険料の会社負担分は含まれていますか」 法定福利費の扱い 約10〜15ポイント
3 「交通費・通信費などの実費は、還元額の内側ですか外側ですか」 実費の扱い 数ポイント
4 「賞与の原資は、還元額に含まれていますか」 賞与の位置づけ 年収ベースで大きく変動
5 「案件が切れた待機期間中の給与は、何割保証されますか」 待機リスクの所在 年収の安定性そのもの

5問すべてに明確な回答が返ってくる会社であれば、還元率の数字は比較可能な情報として信頼できます。逆に「概ね」「おおよそ」といった曖昧な回答が続く場合は、数字そのものの精度を疑ったほうが安全です。

あわせて確認したい項目チェックリスト

  • □ 自分の現在の単価を、会社に聞けば教えてもらえるか
  • □ 単価が上がったとき、給与にどのタイミングで反映されるか(次回更新時か、次期評価時か)
  • □ 単価連動型か固定給型か。固定給型の場合、昇給の判断基準は何か
  • □ 案件の選択に本人の意向が反映される仕組みがあるか
  • □ 商流(自社がクライアントから何次請けか)を教えてもらえるか
  • □ 資格取得支援・研修制度が、規程として存在するか(口頭のみでないか)
  • □ 待機期間の実績(直近1年で平均何日程度か)

特に「自分の単価を教えてもらえるか」は、その会社の情報開示姿勢を測る指標になります。単価がわからなければ還元率も検証できないため、給与交渉の出発点そのものが失われます。

6. 業界の売上は+9.4%、賃金は+3.4%——配分のギャップ

個社の話を離れて、業界全体の配分を見ておきます。前掲の令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果から、主要指標の前年度比は次のとおりです。

指標 令和6年度 前年度比
年間売上高 9兆9,005億円 +9.4%
派遣労働者数 約220万人 +3.9%
派遣先件数 861,926件 +7.9%
派遣料金(全業務平均・8時間換算) 26,257円 +3.6%
賃金(全業務平均・8時間換算) 16,735円 +3.4%

売上高が+9.4%伸びる一方で、1人あたりの賃金の伸びは+3.4%にとどまっています。売上の伸びは人数の増加(+3.9%)と単価の上昇(+3.6%)の両方から来ていますが、そのうち賃金に回った分は単価上昇分とほぼ同水準です。「単価が上がっても給料が上がらない」という感覚は、個社の問題であると同時に、業界全体の配分構造として観測できる現象だと言えます。

正社員より非正社員の賃金のほうが速く上がっている

もう一つ、雇用形態間で起きている変化があります。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(2026年3月24日公表))の情報通信業の数値です。

情報通信業(令和7年) 所定内給与額(月額) 前年比
男女計 406,000円 +3.8%
正社員・正職員 411,000円 +2.4%
正社員・正職員以外 333,800円 +15.7%
雇用形態間賃金格差(正社員=100) 81.2 前年 71.9

この配分のギャップは、人材需給の見通しと合わせて読むと意味がはっきりします。経済産業省は2019年に「2030年にIT人材が最大約79万人不足する」との予測を公表しました(出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年4月公表))。需給が逼迫するという前提が広く共有されている一方で、業界の売上の伸びが賃金の伸びに十分つながっていないのが現状です。エンジニア個人としては、業界全体の需給を待つのではなく、自分の単価と還元率という手元の変数を確認するほうが確実です。

正社員の伸びが+2.4%であるのに対し、正社員以外は+15.7%です。雇用形態間の格差は71.9から81.2へ縮小しました(全産業の同格差は67.4)。外部人材の市場価格が急速に上がっている一方で、社内の給与テーブルはそのペースに追いついていない構図です。所属企業の固定給テーブルに留まっていると、市場価格の上昇分を取りこぼす可能性があります。単価の実勢を定期的に確認すること自体が、待遇維持の行動になるということです。

7. 自分の取り分を逆算する——単価と公的給与水準の二軸比較

SES関連の記事の多くは単価の相場表を載せますが、それは「売上」の表です。比較すべき相手は、同じ年齢帯の公的な給与水準です。両方を並べると、自分の条件が業界のどのあたりにあるかを客観的に判断できます。

公的な給与水準(情報通信業・年齢階級別)

年齢階級 所定内給与額(月額) 前年比
20〜24歳 262,200円 +5.3%
25〜29歳 308,700円 +7.3%
30〜34歳 363,400円 +3.9%
35〜39歳 410,100円 +4.9%
40〜44歳 456,800円 +3.9%
45〜49歳 491,700円 +3.6%
50〜54歳 491,300円 +1.3%
55〜59歳 516,300円 −0.8%

※所定内給与額は残業代・賞与を含まない月額です。年収換算する場合は賞与を別途加算する必要があります。

逆算の手順

  1. 自分の税抜単価を確認する(会社に確認できない場合は、契約書や案件情報から推定)
  2. 還元率を計算する:月額給与(所定内)÷ 税抜単価
  3. 同年齢帯の公的水準と比較する:上表の該当行と自分の所定内給与を比較
  4. ギャップの所在を切り分ける:単価が低いのか、還元率が低いのか、両方か

この切り分けが重要です。単価が市場水準より低いのであれば、打ち手はスキル・工程の見直しか、案件の変更です。単価は妥当なのに還元率が低いのであれば、打ち手は社内の条件交渉か、転職です。原因を特定せずに転職しても、同じ構造の会社に移るだけで終わることがあります。

職種別・経験年数別の単価の実勢についてはSES単価相場の記事と月額単価ガイドで、年収の実額の目安はSESエンジニアの年収ガイドで扱っています。本記事は「仕組み」に特化していますので、金額の相場はそちらをご参照ください。

8. 給与を上げる5つのレバーと、効く順番

仕組みが分かれば、打ち手は5つに整理できます。効果の大きさと実行の難易度で並べたものが次の表です。

レバー 効果の大きさ 実行までの期間 主なアクション
①単価を上げる 大 3〜12か月 上流工程への参画、需要の高い技術領域への移動、契約更新時の交渉
②還元率を上げる 大 即時〜転職期間 社内の条件交渉、還元条件の明確な会社への移動
③稼働率を上げる 中 継続的 待機期間の短縮、参画先の安定化
④スキル価値を上げる 大(遅効) 6〜24か月 クラウド・セキュリティ・データ領域の実務経験、資格取得
⑤交渉力を上げる 中 即時 単価の把握、市場水準の把握、実績の言語化

順番を間違えないこと

多くの場合、着手すべき順番は⑤ → ② → ① → ④ → ③です。理由は次のとおりです。

  • ⑤(交渉力)が先:自分の単価と市場水準を知らなければ、①も②も交渉として成立しません。コストはほぼゼロで、即日着手できます
  • ②(還元率)は即効性が高い:単価が同じでも、還元率が10ポイント変われば月額数万円が動きます。スキル習得の時間を要しません
  • ①(単価)は中期:工程や技術領域の移動には実績の積み上げが必要ですが、天井が最も高いレバーです
  • ④(スキル)は投資:効果が出るまで時間がかかるため、①②と並行して進めます
  • ③(稼働率)は結果:①④が進めば自然に改善する傾向があります

単価交渉の具体的な進め方は単価交渉ガイド、キャリアの段階設計はSESキャリアパスの記事にまとめています。転職を選択肢に入れる場合の年収交渉については転職時の年収交渉ガイドもあわせてご覧ください。

HLTの取り組み

株式会社HLTでは、SESで働くエンジニアの案件参画とキャリア形成の支援を行っています。一般に、自分の単価と市場水準が把握できていない状態では、条件を見直す交渉の出発点が作れません。単価と給与の関係の整理、経歴と実績の棚卸し、次に目指す工程・技術領域の検討を一緒に進めることで、単価見直しの準備や上流工程への移行に取り組みやすくなります。

よくある質問(FAQ)

Q1. マージン率の適正水準はどのくらいですか?

SESには法定の基準がないため「適正値」は定義されていません。対比可能な公的データとして、厚生労働省の令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果では、情報処理・通信技術者のマージン率は38.83%(還元率61.17%)でした。ただしこの派遣料金は消費税込みの額であるため、税率10%で割り戻すとマージン率は約32.7%(還元率約67.3%)となります。比較する際は、提示された数値が税込か税抜かを必ず確認してください。

Q2. 会社に自分の単価を教えてもらえません。違法ではないのですか?

違法ではありません。労働者派遣法第23条第5項の情報提供義務は労働者派遣に適用されるもので、準委任契約であるSESには及びません。ただし、単価が分からなければ還元率の検証ができず、給与交渉の根拠も作れません。開示に応じるかどうかは、その会社の情報開示姿勢を判断する材料になります。なお、実態として指揮命令がクライアントから直接行われている場合は偽装請負に該当する可能性があり、これは契約形態の問題として別に確認が必要です。詳しくはSESの法令遵守ガイドをご覧ください。

Q3. 「高還元SES」は本当に得なのでしょうか?

還元率の数字だけでは判断できません。確認すべきは本文のチェック5問、すなわち(1)分母が税込か税抜か、(2)社会保険料の会社負担分が還元額に含まれるか、(3)交通費等の実費の扱い、(4)賞与原資の扱い、(5)待機期間の給与保証、の5点です。還元率が高くても待機保証がなく、案件が切れた月の収入がゼロに近くなるのであれば、年間の手取りでは還元率の低い会社を下回ることがあります。

Q4. 単価が上がったのに給与が変わりません。何を確認すればよいですか?

まず給与の決定方式を確認してください。単価連動型であれば反映のタイミング(次回契約更新時か、次期評価時か)が規定されているはずです。固定給型であれば単価と給与は制度上連動しないため、昇給は評価制度を通じて行われます。この場合は昇給の判断基準と過去の実績を確認したうえで、評価制度の枠組みのなかで交渉することになります。SESの評価制度の記事も参考にしてください。

Q5. 商流が深いと、なぜ単価が下がるのですか?

クライアントと自社の間に複数の企業が入ると、各社がそれぞれのマージンを取るためです。元請けが受け取る金額と、実際に作業するエンジニアの所属企業が受け取る金額の差が、階層の数だけ広がります。自社が何次請けかを確認することは、単価の水準を理解するうえで還元率と同じくらい重要です。面談時に「今回の案件の商流を教えていただけますか」と確認することは、通常の質問として問題ありません。

Q6. 業界全体では給与は上がっているのですか?

指標によって見え方が異なります。労働者派遣事業報告書の集計結果では、令和6年度の年間売上高が前年度比+9.4%であるのに対し、1人あたり賃金の伸びは+3.4%でした。一方、賃金構造基本統計調査では、令和7年の情報通信業の所定内給与額は406,000円で前年比+3.8%、うち正社員以外は333,800円で+15.7%と大きく伸びています。全体として上昇基調ではあるものの、正社員の固定給テーブル(+2.4%)は外部人材の市場価格の上昇に追いついていない、というのが公表データから読み取れる構図です。

まとめ

  1. SESの給与は「単価 × 還元率」で決まります。マージンには社会保険料の事業主負担、待機期間の給与原資、営業・管理費が含まれており、単純な中抜きではありません。
  2. 広く引用される「マージン率約39%」は税込ベースです。令和6年度の情報処理・通信技術者は38.83%ですが、消費税率10%で割り戻すと約32.7%(還元率約67.3%)になります。比較の際は分母の定義を必ず確認してください。
  3. 無期雇用のほうがマージン率は高くなっています(39.06% vs 37.76%)。これは待機時の給与保証という対価と読むのが実務的です。保証が実際に機能しているかを確認しましょう。
  4. SESに還元率の法定計算式は存在しません。労働者派遣法第23条第5項は労働者派遣にのみ適用され、準委任契約のSESは対象外です。だからこそ「還元率チェック5問」で定義を確認する必要があります。
  5. 打ち手の順番は⑤交渉力 → ②還元率 → ①単価 → ④スキル → ③稼働率です。まず自分の単価と市場水準を知ることが、すべての交渉の出発点になります。

キャリアのご相談について

株式会社HLTでは、ITエンジニアの案件参画とキャリア形成の支援を行っています。単価と給与の関係、次に目指す工程や技術領域について、現在の状況を一緒に整理することができます。在職中のご相談も可能です。詳細はお問い合わせフォーム、募集中のポジションは採用情報をご覧ください。

参考文献・出典

  • 厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)https://www.mhlw.go.jp/content/001684019.pdf(最終アクセス:2026年8月12日)
  • 厚生労働省 法令等データベース「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」第23条第5項 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=75021000&dataType=0&pageNo=1(最終アクセス:2026年8月12日)
  • 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(2026年3月24日公表)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/index.html(最終アクセス:2026年8月12日)
  • 厚生労働省「労働者派遣事業報告書の集計結果」一覧 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000079194.html(最終アクセス:2026年8月12日)
  • 経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年4月公表)https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/gaiyou.pdf(最終アクセス:2026年8月12日)

本記事のマージン率・還元率の数値は、労働者派遣事業の公表統計に基づく参考値です。SESは準委任契約であり労働者派遣とは契約形態が異なるため、これらの数値はSES業界の実測値ではなく、対比可能な公的ベンチマークとして掲載しています。税抜換算値は公表値を消費税率10%で割り戻した算出値です。

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