SESエンジニアとして客先常駐で働いていると、「契約と違う業務をさせられている」「単価が上がらない」「現場でハラスメントを受けた」「引き抜きの話があって困っている」など、様々なトラブルに直面することがあります。厚生労働省の「派遣労働者実態調査」では、IT系を含む派遣・業務委託就労者の約15〜20%が何らかのトラブルを経験していると報告されており(出典:厚生労働省「派遣労働者実態調査」)、これはSES就業者にとっても決して他人事ではありません。本記事では、SES客先常駐エンジニアが実際に経験しやすい7つのトラブル事例を取り上げ、それぞれの法的根拠と具体的な解決策、および相談窓口を徹底解説します。トラブルを未然に防ぐ予防策も合わせてお伝えします。
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SESエンジニアが直面するトラブルの全体像
SES(システムエンジニアリングサービス)は、エンジニアとSES企業が雇用契約(または業務委託契約)を結び、エンジニアが第三者企業(常駐先)で業務を行う働き方です。この「三者関係」の複雑さが、様々なトラブルの温床となります。
| トラブル種別 | 発生頻度 | 主な被害 | 法的根拠 |
|---|---|---|---|
| 偽装請負(直接指揮命令問題) | ★★★★☆ | キャリア・法的リスク | 労働者派遣法第24条 |
| 業務内容の相違 | ★★★★★ | スキル停滞・不満足 | 民法第632条(請負) |
| 単価・給与の不透明性 | ★★★★☆ | 収入不満・不信感 | 労働基準法第89条 |
| 引き抜き問題 | ★★★☆☆ | キャリア・人間関係 | 民法第22条(職業選択) |
| 突然の契約終了・強制撤退 | ★★★☆☆ | 収入断絶リスク | 労働契約法第17条 |
| ハラスメント・孤立 | ★★★★☆ | 精神的健康被害 | 労働施策総合推進法 |
| 過重労働・残業代未払い | ★★★★★ | 健康被害・収入損失 | 労働基準法第37条 |
トラブル①:偽装請負(常駐先から直接指揮命令を受ける問題)
問題の概要と実態
SES契約(準委任契約・業務委託契約)においては、エンジニアへの指揮命令権はSES企業側にあります。常駐先企業がエンジニアに対して直接「この機能を明日までに作れ」「残業してくれ」「担当業務を変えろ」などと指示することは、偽装請負となり労働者派遣法第24条に違反する可能性があります。
よくある事例
「形式上はSES契約なのに、常駐先のPMに日々タスクを割り当てられ、業務報告も常駐先のマネージャーにしている」「SES企業の担当者は月1回しか来ないが、実質的な指示命令は常駐先から来ている」といったケースが典型的な偽装請負の状態です。
法的根拠と解決策
労働者派遣法第24条は、派遣元・派遣先が偽装請負を行うことを禁じており、発覚した場合は常駐先・SES企業の双方が行政指導・罰則の対象となります。エンジニア自身への直接的な罰則はありませんが、偽装請負状態に気づいた場合は以下の対応が有効です。
- SES企業の担当営業に「常駐先から直接業務指示を受けている」と報告する
- 業務指示の記録(メール・チャット)を保存しておく
- 改善されない場合は、労働局・監督署への相談を検討する
- 最終的には案件からの撤退を営業に依頼することも正当な選択肢
トラブル②:業務内容の相違(スキルシートと実業務が異なる)
問題の概要
「Reactを使ったフロントエンド開発と聞いていたのに、実際は古いVBScriptのテストばかりだった」「設計工程も担当すると聞いていたのに、ひたすらデータ入力作業をさせられた」――このような業務内容の相違は、SES案件の中で最も多く発生するトラブルです。
原因と背景
SES営業担当が案件の魅力を誇張して紹介するケースや、プロジェクト開始後に現場の状況が変化するケースが主な原因です。また、「最初は保守業務から入ってもらい、徐々に開発業務に移行する予定」という計画が実行されないまま、保守業務が続くパターンも多くみられます。
解決策と予防策
トラブル発生後の解決策として、まずSES企業の営業担当に「紹介時と業務内容が異なる」と具体的に文書(メール)で伝えます。正式な苦情として記録に残すことが重要です。改善の見通しがない場合は、案件からの撤退と次の案件への移行を求める交渉が可能です。
予防策としては、案件参画前に「業務内容の詳細を書面で確認する」ことが最も有効です。口頭説明だけでなく、業務内容・使用技術・担当工程を記載した書面を求めましょう。また、面談時に現場担当者から直接業務内容を確認することも重要です。
トラブル③:単価・給与の不透明性と単価交渉の壁
問題の概要
「スキルも資格も上がったのに、給与がまったく上がらない」「案件の単価が上がったはずなのに、自分の収入に反映されていない」というトラブルは、SESエンジニアの満足度を大きく下げる問題です。
法的根拠:就業規則と賃金規定の確認
労働基準法第89条では、賃金の決定・計算・支払いの方法を就業規則に記載することを義務付けています。SES企業との雇用契約書・就業規則に「単価に対する給与比率」や「昇給のタイミング」が記載されているはずです。これらを確認した上で、事実に基づいた単価交渉を行いましょう。
単価交渉の実践手順
- 現在の案件単価(可能であれば)と自分の給与の関係を確認する
- 取得資格・スキルアップの実績をリストアップして書面化する
- 市場相場(同スキル・同経験年数の月単価)を調査する
- SES企業の営業担当に「単価見直しの面談」を申し込む
- 改善されない場合は、他のSES企業への転籍も選択肢に入れる
トラブル④:引き抜き問題(常駐先から直接雇用の打診)
問題の概要
常駐先の現場でパフォーマンスを発揮していると、「ぜひうちの社員として来てほしい」という直接雇用の打診(引き抜き)を受けることがあります。日本国憲法第22条第1項の職業選択の自由により、引き抜き自体は違法ではありませんが、SES企業との契約内容や人間関係に影響する複雑なトラブルです。
SES企業との競業避止・引き抜き禁止条項
多くのSES企業との契約には「常駐先企業への転籍禁止」や「常駐期間中・終了後○ヶ月以内の直接雇用を禁ずる」条項が含まれています。ただし、これらの条項は合理的な期間・範囲を超えると無効とみなされる場合があります(労働契約法第16条の趣旨)。
適切な対応フロー
- まずSES企業の担当営業に打診があった事実を正直に報告する(隠蔽はリスク大)
- SES企業との契約書・就業規則で競業避止条項の内容を確認する
- 転籍を希望する場合は、SES企業との協議により円満な移行を目指す(違約金等の確認)
- 条項の有効性に疑問がある場合は、弁護士や労働局に相談する
トラブル⑤:突然の契約終了・強制撤退
問題の概要
「プロジェクトの予算削減でSESの枠を削減する」「現場のマネージャーが変わり、SESを使わない方針になった」など、エンジニア側の問題とは無関係に突然の契約終了を告げられるケースがあります。
法的権利:30日前予告義務
SES企業とエンジニアの間が雇用契約である場合、労働契約法・労働基準法により、解雇(または雇用終了)には原則30日前の予告または予告手当の支払いが必要です。急な契約終了を告げられた場合は「30日前の予告がありましたか?」を確認しましょう。
業務委託(個人事業主)として契約している場合は労働法の保護が限定的になりますが、契約書の「解約予告期間」の条項を確認し、違反があれば損害賠償請求の根拠になります。
突然の契約終了への対処法
- SES企業の担当者から終了理由を書面で確認する
- 30日前予告の有無・予告手当の確認
- 次の案件への迅速な移行サポートをSES企業に求める
- 不当な理由による解雇の場合は、労働組合・労働局へ相談
- 複数のSES企業に登録しておくことで、次の案件探しを迅速化できる
トラブル⑥:ハラスメント・孤立(客先常駐特有の問題)
SESならではのハラスメントリスク
客先常駐のSESエンジニアは、所属はSES企業でも実際に顔を合わせるのは常駐先の社員です。「社員じゃないから」と情報共有から除外される、雑用を押し付けられる、技術的なミスを社員よりも強く叱責される、といった「SES差別」ともいえる状況が発生することがあります。また、現場に他のSES社員がいない「一人常駐」の場合、孤立感や精神的負担が大きくなります。
法的根拠:パワーハラスメント防止法
2020年6月に施行された改正「労働施策総合推進法」(パワーハラスメント防止法)により、すべての企業にパワハラ防止措置が義務付けられています。SESエンジニアが常駐先でパワハラを受けた場合も、常駐先企業はこの義務を負います。
相談窓口と対応フロー
- SES企業の担当営業に具体的な事実(日時・発言・行為)を報告する
- 証拠(メール・チャット・メモ)を保存しておく
- 精神的ダメージが大きい場合は、早急な現場交代をSES企業に求める
- 外部相談窓口:厚生労働省の「総合労働相談コーナー」(各都道府県労働局)
- 深刻な場合:弁護士・産業カウンセラーへの相談、労働審判も選択肢
トラブル⑦:過重労働・残業代未払い
SESにおける残業代の複雑な問題
SES契約では、契約時間(例:月140〜180時間)を超えた超過時間・未達時間の単価調整が契約書に定められています。しかし「現場の繁忙期で月200時間働いたが、残業代が支払われていない」「SES企業が超過分を常駐先に請求できていないことを理由に払わない」といった問題が発生するケースがあります。
法的権利:労働基準法第37条
SES企業との間に雇用契約がある場合、労働基準法第37条により時間外労働(法定労働時間1日8時間・週40時間超)には割増賃金(1.25〜1.5倍)の支払いが義務付けられています。「常駐先に請求できなかった」はSES企業の問題であり、エンジニアへの支払い義務には影響しません。
残業代未払いの対処法
- 勤務時間の記録(タイムカード・PCログ・入退館記録)を保存する
- SES企業に残業代の計算根拠と支払明細の開示を求める
- 未払いが確認できた場合は、まず内容証明で請求する
- 解決しない場合:労働基準監督署への申告、または弁護士・社会保険労務士への相談
- 残業代の時効は2年(2020年4月以降の分は3年)
SESトラブルの主な相談窓口一覧
| 機関名 | 対応内容 | 連絡先 | 費用 |
|---|---|---|---|
| 総合労働相談コーナー(都道府県労働局) | 労働問題全般・あっせん | 各都道府県労働局 | 無料 |
| 労働基準監督署 | 残業代未払い・労働基準法違反 | 各地の監督署 | 無料 |
| 労働組合・ユニオン | 団体交渉・ハラスメント対応 | 地域合同労組等 | 入会費が必要な場合あり |
| 弁護士(法テラス) | 法的手続き・損害賠償請求 | 0570-078374 | 収入要件次第で無料 |
| 社会保険労務士 | 労務トラブル・給与計算確認 | 各社労士事務所 | 初回相談無料の場合あり |
| 産業カウンセラー(EAP) | メンタルヘルス・ハラスメント | 会社のEAP窓口 | 雇用主負担の場合あり |
株式会社HLTのトラブル対応実績
事例①:業務内容相違を迅速解決し28歳エンジニアが希望案件に移行
株式会社HLTでは、実際にSESトラブルのケースを多数サポートしてきました。たとえば28歳・フロントエンドエンジニアのケースでは、「Vue.jsによる新規開発」という条件で参画したにもかかわらず、実際には古いJSPの保守作業のみを担当させられているという相談が入りました。HLTの担当営業が即日常駐先と協議し、業務内容の是正が困難と判断。参画後3週間で次の案件(React+TypeScript、直請け)への移行を実現しました。移行後の月収は8万円増となり、エンジニアのキャリア目標に沿った業務に就くことができました。
事例②:過重労働が発覚、34歳エンジニアの月残業85時間を是正
もう1件の事例として、34歳のバックエンドエンジニアが常駐先の繁忙期に月85時間超の残業を強いられていたケースがあります。HLTの月次フォロー面談で過重労働が発覚し、担当営業が即座に常駐先と交渉。36協定の特別条項の確認と、業務配分の見直しを要求しました。翌月から残業は月30時間以下に是正され、残業代の過去3ヶ月分(約21万円)も追加支払いされました。このケースでは、定期面談での状況把握が早期解決につながった典型例です。
まとめ:SESトラブルを未然に防ぐ7つの予防策
SESのトラブルを防ぐために、以下の7つを実践することが重要です。
- 案件参画前に業務内容を書面で確認する:口頭説明だけでなく、業務内容・使用技術・工程を書面で残す
- SES企業の担当営業との定期連絡を維持する:月1回以上のフォロー面談で変化を早期に共有する
- 指揮命令関係を明確にしておく:業務指示は必ずSES企業経由で行うよう、参画時に確認する
- 勤怠記録を必ず自分でも管理する:タイムカードのコピーや勤務時間の手帳記録を習慣化する
- 報酬・単価の改定ルールを入社前に確認する:「いつ、どのような条件で昇給するか」を書面で確認
- ハラスメントを感じたら早めにSES企業に報告する:「証拠が揃ってから」ではなく、気づいた段階で相談する
- 自分の権利を知っておく:労働基準法・派遣法の基礎知識を持つことがトラブル対応の第一歩
HLTのSESエンジニアサポート体制
株式会社HLTでは、トラブルを未然に防ぐために以下のサポートを提供しています:
- ✅ 月1回以上の定期フォロー面談(担当営業が実施)
- ✅ 業務内容・残業時間の書面確認を入場前に実施
- ✅ トラブル発生時の迅速な常駐先交渉(原則24時間以内に対応)
- ✅ メンタルヘルス相談窓口の設置
よくある質問(FAQ)
Q1. 常駐先から直接業務指示を受けていますが、これは問題ですか?
はい、SES(準委任契約・業務委託)では常駐先からの直接指揮命令は原則として偽装請負となり、労働者派遣法違反となる可能性があります。まずSES企業の担当営業に報告し、指揮命令系統をSES企業経由に是正してもらうよう求めてください。
Q2. 現場のパワハラをSES企業に相談しても動いてもらえない場合はどうすればいいですか?
SES企業が適切に対応しない場合は、都道府県労働局の「総合労働相談コーナー」や、弁護士(法テラス)への相談が有効です。ハラスメントの証拠(日時・発言内容のメモ・メール)を保存しておくことが重要です。深刻な場合は、案件からの即時撤退を求める権利もあります。
Q3. 案件の単価が上がったのに給与が変わらない場合、交渉できますか?
はい、交渉できます。SES企業との雇用契約書・就業規則に記載された賃金規程を確認し、単価アップの実績と市場相場を示した上で、担当営業に単価見直し面談を申し込みましょう。改善されない場合は、他のSES企業への転籍も正当な選択肢です。
Q4. SES案件を途中で辞めることはできますか?
できます。民法第627条により、期間の定めのない雇用契約では2週間前に申し出れば退職できます。ただしSES案件の場合、プロジェクトへの影響を最小限にするため、1〜3ヶ月前の事前申告がマナーとされています。SES企業との契約書で定められた解約予告期間を確認しましょう。
Q5. 常駐先から「うちの社員として来ないか」と言われました。どうすればいいですか?
まずSES企業の担当営業に打診があった事実を報告しましょう。隠蔽すると後に信頼関係を損なうリスクがあります。SES企業との契約書で競業避止・引き抜き禁止条項を確認し、転籍希望の場合は協議によるスムーズな移行を目指しましょう。条項の有効性については弁護士への相談が有効です。
Q6. SES企業が倒産した場合、現在の案件はどうなりますか?
SES企業が倒産した場合、常駐先との直接契約に切り替わるケース、常駐先が別のSES企業に発注するケース、案件が終了するケースなど様々です。SES企業の経営状況に不安を感じる場合は、迅速に次の転籍先を検討し始めることが重要です。給与未払いが発生した場合は「未払賃金立替払制度」(労働者健康安全機構)を利用できる場合があります。
参考文献・出典
- 厚生労働省「派遣労働者実態調査」(2023年)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/haken-sogo.html
- 厚生労働省「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(2024年最新版)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken/
- 厚生労働省「パワーハラスメント防止措置が事業主の義務になりました」(2020年)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/dl/power-harassment-prevention.pdf
- IPA(情報処理推進機構)「IT人材白書2024」(2024年)https://www.ipa.go.jp/publish/wp-it-jinji/index.html
- 経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年)https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/










