「契約と違う業務をさせられている」「現場でハラスメントを受けた」「突然プロジェクトを外された」——SES(システムエンジニアリングサービス)エンジニアとして客先常駐で働いていると、こうしたトラブルに直面することがあります。
準委任契約を基本とするSESでは、指揮命令権はあくまでSES企業(自社)にあります。しかし現場の実態として、クライアントから直接指示を受けるケースや、契約外の業務を求められるケースは少なくありません。こうした状況で「どこに相談すれば良いのか」「法的にどう対処できるのか」を知らないエンジニアが多いのも現実です。
本記事では、SES客先常駐で実際に起こりやすい7つのトラブル事例を取り上げ、それぞれの法的根拠・具体的解決策・相談窓口を徹底解説します。株式会社HLTがこれまでサポートしてきた事例をもとに、あなたが今すぐ取れるアクションを明確にします。
SESエンジニアにとくに多い7つのトラブル事例と解決策
SESエンジニアが客先常駐中に経験するトラブルは、大きく「契約・業務内容」「職場環境」「キャリア・単価」「契約終了」の4カテゴリに分類されます。以下、各カテゴリで頻度の高い事例を詳しく解説します。
【事例1】契約と異なる業務を強要される(偽装請負リスク)
状況:面談では「PythonでのAPI開発」と聞いていたのに、現場に入ったら「Excelでの資料作成や電話対応を中心にやってほしい」と言われた——このケースは、SES現場でとくに多い典型的なトラブルです。
法的根拠:SESは民法656条に基づく準委任契約です。委任事務(業務の種類)は契約書に明記されており、クライアントが契約外の業務を一方的に指示することは準委任契約の範囲外となります。さらに、クライアントがSESエンジニアに直接指揮命令をする場合、それが実態として「労働者派遣」に該当し、厚生労働省が定める「偽装請負」として問題視されるケースがあります(出典:厚生労働省「請負と労働者派遣の区分に関するガイドライン」)。
解決策:
- まずSES企業の営業担当(自社のエスカレーション窓口)に事実を報告する
- 担当が「様子を見て」と言う場合は、業務内容の食い違いを文書(メール・チャット)で記録しておく
- 改善されない場合は、都道府県労働局の需給調整事業課またはハローワークに相談可能
HLT経験:株式会社HLTでは、Javaエンジニア(経験3年)がバックエンド開発のはずが資料作成を続けさせられたケースをサポートしました。SES企業として即座に現場とネゴを行い、開発業務への配置転換と月単価52万→60万への改善を2ヶ月以内に実現しています。
【事例2】クライアントから直接指揮命令される(指揮命令権の混乱)
状況:「自社(SES企業)の上司がほとんど現場に来ないので、クライアント側のPMから直接タスクを割り当てられ、残業を命じられる。自分の所属がどちらなのか混乱している」
法的根拠:SES(準委任契約)では指揮命令は受託側(SES企業)にあります。クライアントが直接指揮命令できるのは「労働者派遣法」に基づく派遣契約のみです。SESエンジニアがクライアントから直接残業命令を受けた場合、それは「偽装請負」の疑いがある違法状態です。
解決策:
- クライアントから直接「今週は毎日22時まで作業してほしい」等の指示を受けた場合、その内容をスクリーンショットや文書で保存
- 自社担当者に「指揮命令者はSES企業側が担うべきであり、現状の関係整理をお願いしたい」と依頼する
- 改善されない場合は、労働基準監督署(36協定の状況を確認の上)や都道府県労働局に相談する
【事例3】突然「契約終了」を通告される(退場勧告)
状況:「本日付でプロジェクトを外れてほしい」「能力が足りないので次の更新はない」——突然の契約終了通告は、SESエンジニアにとって最もストレスの高いトラブルの一つです。
法的根拠:SES(準委任契約)の解除については民法651条が適用されます。委任者(クライアント)は原則いつでも解除可能ですが、「不利な時期に解除した場合」は損害賠償義務が生じることがあります(民法651条2項)。また、SES企業とエンジニアの間の雇用契約(正社員・契約社員)については、会社都合解雇に関する労働基準法の規定が適用されます(出典:厚生労働省「解雇に関するルール」)。
解決策:
- 契約終了の理由を書面で要求する(「スキル不足」の根拠を明確化)
- 次案件の紹待機期間中の給与保証(雇用契約上の権利)をSES企業に確認する
- 正当な理由のない即時終了については、SES企業側の弁護士または都道府県の労働相談センターに相談する
HLT経験:株式会社HLTでサポートしたケースでは、インフラエンジニア(経験5年)が「技術スタックが合わない」として突然の退場を通告された際、HLTが即時に代替案件を手配。退場通告から14日以内に月単価70万の新案件にアサインし、給与の空白期間をゼロにしました。
【事例4】スキルアップ機会が与えられない(技術的停滞)
状況:「3年間同じ現場で同じ作業しかやっておらず、履歴書に書けるスキルが全然増えていない。転職しようとしたら『スキルが古い』と言われた」
SES業界では長期案件による技術的停滞が深刻な課題です。IPAの「IT人材白書」では、ITエンジニアの技術陳腐化リスクが年々高まっていることが指摘されています(出典:IPA「IT人材白書2024」)。
解決策:
- 現在の案件状況とスキルアップ計画を自社担当者と半期ごとに面談で確認する
- 稼働時間外での資格取得・勉強会参加を積極的に行い、ポートフォリオを更新する
- 「スキルチェンジ案件への移行希望」をSES企業に文書で申し入れる
- 改善なき場合は、より成長機会を提供できるSES企業への転職を検討する
【事例5】引き抜きオファーを受けてトラブルになる
状況:「クライアント企業の担当者から『うちに直接来てほしい』と言われた。どうしたらいい?」
法的根拠:SES契約には多くの場合、「競業避止・引き抜き禁止条項」が含まれています。この条項に基づき、クライアントが契約期間中または終了後一定期間内にSESエンジニアを直接雇用しようとすること、またはエンジニアがそれを受け入れることは、損害賠償の対象となる場合があります。
解決策:
- 引き抜きオファーを受けたら、まず自社(SES企業)の担当者に相談する(隠蔽は後々のトラブルを拡大させる)
- 自社との雇用契約・SES契約書の「競業避止条項」「引き抜き禁止条項」を確認する
- 合法的に転職したい場合は、現在のSES契約終了後の一定期間(契約書で定められた期間)が経過してから対応する
【事例6】現場でのハラスメント(パワハラ・モラハラ)
状況:「クライアント企業の上司から毎日怒鳴られる」「休憩をとると嫌みを言われる」
SES客先常駐の特殊性として、「指揮命令は自社にあるが、物理的には他社の環境で働く」という点があります。このためハラスメントの相談先が不明確になりやすいです。
解決策:
- 証拠(録音・文書・日時記録)を確保し、自社担当者に速やかに報告する
- 自社がクライアントに申し入れを行うよう要求する(SES企業として、現場環境の改善交渉は会社の義務)
- 改善しない場合は、現場からの撤退を自社に要求できる(安全配慮義務違反:労働契約法第5条)
- 証拠を持って都道府県労働局の「ハラスメント相談窓口」に相談可能
【事例7】単価が上がらない・マージン率が不透明
状況:「3年働いているのに月給が全然上がらない。会社が単価を教えてくれないし、マージン率もわからない」
解決策:
- SES企業に対して「現在の月単価と還元率」の開示を求める(情報提供の義務化は一部SES企業で進んでいる)
- 転職・案件変更を検討する場合は、還元率70%以上を明示している「高還元SES」を比較候補とする
- 資格取得(AWS認定・PMP・応用情報技術者等)により、単価交渉の武器を増やす
- エージェント経由で市場の月単価相場(同スキル・同経験)を把握し、根拠ある交渉を行う
トラブル別:相談窓口と対応フローチャート
SESトラブルの種類によって、適切な相談先は異なります。以下の一覧表を参考に、状況に合った窓口に相談してください。
| トラブルの種類 | 第1相談先 | 第2相談先(改善なき場合) | 緊急度 |
|---|---|---|---|
| 契約外業務の強要 | 自社担当者 | 都道府県労働局(需給調整事業課) | 高 |
| 偽装請負・違法指揮命令 | 自社担当者 | 都道府県労働局・厚生労働省 | 高 |
| 突然の契約終了 | 自社HR・弁護士 | 労働基準監督署 | 高 |
| ハラスメント | 自社担当者 | 都道府県労働局(ハラスメント窓口) | 最高 |
| 引き抜きオファー | 自社担当者 | (弁護士に契約内容確認) | 中 |
| スキルアップ機会なし | 自社担当者(面談要求) | 転職エージェント相談 | 低 |
| 単価・マージン不透明 | 自社担当者(開示要求) | 高還元SESへの転職比較 | 中 |
トラブルを未然に防ぐ!SES参画前チェックリスト
トラブルの多くは、案件参画前の確認不足から始まります。以下のチェックリストを参画前に必ず確認しましょう。
- ✅ 業務内容・使用技術・役割が契約書に明記されているか
- ✅ 指揮命令者がSES企業側(自社)であることが明記されているか
- ✅ 残業・休日出勤の上限と承認フローが明確か
- ✅ 月単価と還元率(または月給の算出根拠)を確認したか
- ✅ 引き抜き禁止・競業避止の条項内容と期間を確認したか
- ✅ 契約更新の通知期日(何日前に通知するか)を確認したか
- ✅ SES企業側に日常的に連絡できる担当者(緊急連絡先)がいるか
- ✅ 勉強会・資格取得支援などの教育制度があるか
株式会社HLTのSESエンジニアサポート体制
株式会社HLTでは、SESエンジニアが現場で困ったとき24時間以内に担当者が対応できる体制を整えています。月次面談でスキルアップ状況・現場環境・単価交渉の状況を定期確認し、問題の早期発見・解決を実践しています。
「現場でのトラブルを一人で抱え込みたくない」「次のステップに向けて案件を変えたい」——そんなSESエンジニアのご相談に、HLTの専任コーディネーターが対応します。
💼 無料相談受付中
SESトラブル・案件変更・キャリア相談は株式会社HLT お問い合わせページからお気軽にご相談ください。
SESトラブルに関するよくある質問(FAQ)
Q1. SESエンジニアが現場でトラブルに遭ったとき、最初に取るべき行動は?
まず自社(SES企業)の担当者・営業に事実を報告することが最優先です。SESは準委任契約であり、クライアントへの直接交渉はSES企業が行うのが原則です。問題の証拠(メール・チャット・録音)を確保してから報告すると、企業側も対応しやすくなります。
Q2. 契約書に書いていない業務をやらされている。断っていい?
はい、断ることができます。SESは準委任契約であり、業務範囲は契約書に基づきます。ただし現場で直接断るよりも、自社担当者経由でクライアントに申し入れてもらうほうが関係を損なわずスムーズです。
Q3. 引き抜きオファーを受けたら、バレなければ問題ない?
リスクが高いです。多くのSES契約には競業避止・引き抜き禁止条項があり、違反した場合に損害賠償を請求されるケースもあります。必ず自社担当者に相談した上で、合法的な転職ルートを確認してください。
Q4. 突然「今月で契約終了」と言われた。給与は補償される?
雇用契約の種類によります。正社員の場合は解雇予告(30日前の通知または30日分以上の解雇予告手当)が必要です(労働基準法第20条)。契約社員の場合は期間内解雇に合理的理由が必要です。まず会社のHR担当者に書面での説明を求めてください。
Q5. 月単価を教えてもらえない。法的に問題ある?
現行法では月単価の開示義務はSES企業にありませんが、2024年施行のフリーランス・事業者間取引適正化等推進法により透明性向上の機運が高まっています。開示に応じないSES企業は、今後の業界スタンダードから外れていく傾向にあります。転職エージェントを通じて相場を把握し、交渉材料にすることをお勧めします。
Q6. SESのトラブルを公的機関に相談するにはどこへ?
主な相談窓口は以下の通りです。①都道府県労働局(需給調整事業課):偽装請負・指揮命令問題 ②労働基準監督署:解雇・残業・給与未払い ③都道府県の労働相談センター:総合的な相談 ④法テラス:法的トラブル全般の無料相談
Q7. 現場のハラスメントを自社が「様子を見て」と対応してくれない。どうすれば?
SES企業には安全配慮義務(労働契約法第5条)があります。「様子を見て」では対応不十分です。上位の管理職・コンプライアンス窓口に昇格して相談するか、それでも改善しない場合は都道府県労働局のハラスメント相談窓口に直接相談することも可能です。
まとめ:SESエンジニアはトラブルを一人で抱えないことが最大の解決策
SES客先常駐エンジニアが経験しやすい7つのトラブルを、法的根拠と解決策とともに解説しました。最も重要なポイントを3点にまとめます。
- ①早期に自社担当者に報告する:問題を一人で抱え込むほど解決が難しくなります。証拠を保存しながら、速やかに自社エスカレーション窓口に連絡しましょう。
- ②法的根拠を知ることで交渉力が高まる:「これは偽装請負に該当する可能性があります」「安全配慮義務の問題です」と伝えるだけで、SES企業・クライアント双方の対応が変わることがあります。
- ③SES企業選びがトラブル予防の根本:透明な単価開示・定期面談・迅速な現場対応力を持つSES企業を選ぶことが、トラブルを未然に防ぐ最善策です。
SESでのキャリアを安心して積みたい方、現在のトラブルを解決したい方は、株式会社HLTの専任コーディネーターにご相談ください。
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SESトラブル相談・案件変更・キャリアアップ支援:https://hlt-inc.jp/contact/
SESエンジニア向けサービス:https://hlt-inc.jp/
参考文献・出典
- 厚生労働省「請負と労働者派遣の区分に関するガイドライン(平成24年3月改訂)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken/page22058.html(2026年6月12日最終確認)
- 厚生労働省「解雇に関するルール」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq/kaiko_faq.html(2026年6月12日最終確認)
- IPA「IT人材白書2024」https://www.ipa.go.jp/jinzai/chousa/it-jinzai2024.html(2026年6月12日最終確認)
- 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等推進法(2024年施行)」https://www.jftc.go.jp/freelance/(2026年6月12日最終確認)










