「SESは離職率が高い」——転職を考えるエンジニアが必ず目にする言葉です。しかし厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」を確認すると、情報通信業の離職率は10.2%で、全産業平均の14.2%を4.0ポイント下回っています。さらに同じ調査で情報通信業の入職率は11.2%、入職超過率は+1.0ポイント——つまり統計上、この産業では入る人が出る人を上回っています。それでも「人が足りない」と言われ続けるのは、辞める人が多いからではなく、需要の伸びに供給の伸びが追いついていないからです。この記事では公的統計で業界平均を確定させたうえで、個社を見極めるための確認項目を、求人票・面談・就業条件明示書という実際に手元で検証できる資料に落とし込んで整理します。
1. 結論:SESの離職率は「業界平均」では説明できない
最初に、公的統計で事実関係を確定させます。「SESの離職率は20%」「30%」といった数字がネット上で流通していますが、これらの多くは出典が示されないか、示されていても自社アンケートです。検証可能な一次情報から出発します。
1-1. 厚労省「令和6年 雇用動向調査」が示す情報通信業の実数
厚生労働省の「令和6年 雇用動向調査」によると、令和6年(2024年)の全産業の入職率は14.8%、離職率は14.2%、入職超過率は+0.6ポイントでした。産業別に見ると、情報通信業は入職率11.2%・離職率10.2%・入職超過率+1.0ポイントです。実数でも入職者209.5千人に対し離職者190.2千人で、入職が離職を上回っています。
ここから読み取れることは2つあります。1つ目は、情報通信業の離職率10.2%は全産業平均14.2%より4.0ポイント低いということ。2つ目は、入職率11.2%が離職率10.2%を1.0ポイント上回っているということです。後者は「入職超過」と呼ばれる状態で、統計上、この産業では人が純増しています。「業界全体から人が逃げている」という語り口は、令和6年の数字では支持されません。
1-2. 表1|主要産業の入職率・離職率(令和6年)
| 区分 | 入職率 | 離職率 | 入職超過率 | 読み取り |
|---|---|---|---|---|
| 全産業(計) | 14.8% | 14.2% | +0.6pt | わずかに入職超過 |
| 情報通信業 | 11.2% | 10.2% | +1.0pt | 離職率は平均より4.0pt低く、人は純増 |
出典:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」(2025年公表)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-2/index.html(最終アクセス:2026年8月21日)
1-3. 「離職率が低い」ことは「働きやすい」を意味しない
離職率が低いこと自体は、必ずしも良い状態を示しません。転職市場が活発でなく、辞めたくても辞められない状況でも離職率は下がります。逆に、離職率が高くても、それが「より条件の良い会社へのステップアップ」であれば、個々のエンジニアにとっては悪い話ではありません。
重要なのは、離職率という単一の数字ではなく、その中身(誰が、何年目に、どこへ、なぜ辞めたか)です。そして中身は業界統計には出てきません。個社に対して確認するしかない情報です。この記事の後半(第5章・第6章)は、その確認方法に紙幅を割いています。
2. なぜ「SESは離職率が高い」と言われるのか——3つの計測ズレ
公的統計が「情報通信業の離職率は平均以下」と示しているのに、なぜ「SESは離職率が高い」という認識が定着しているのでしょうか。3つの計測上のズレが原因と考えられます。
2-1. ズレ①:「SES企業」という統計区分が存在しない
日本標準産業分類に「SES業」という区分はありません。SES(システムエンジニアリングサービス)は契約形態を指す業界用語であり、統計上は「情報通信業」のうち「情報サービス業」に含まれます。この区分には、受託開発を主とするSIer、自社サービスを運営する企業、パッケージソフト会社、そしてSES中心の企業がすべて混在しています。
つまり、「SES企業だけの離職率」を示す公的統計は存在しません。ネット上の「SESの離職率○○%」という数字は、ほぼすべてが特定事業者のアンケートか、推計か、体感です。出典を確認する習慣を持つことが最初の防御になります。
2-2. ズレ②:新卒3年以内離職率と全体離職率の混同
「3年以内に3割が辞める」という表現は、厚生労働省が別途公表している新規学卒就職者の離職状況に基づくものです。これは全社員の年間離職率とはまったく別の指標です。3年間の累積値と、1年間の単年値を並べて比較すれば、当然前者のほうが大きく見えます。
SESに関する記事でこの2つが混在していることは珍しくありません。数字を見たら「累積か単年か」「対象は新卒か全社員か」をまず確認してください。
2-3. ズレ③:企業間分散が業界平均を無意味にする
これが最も本質的な問題です。SESと一口に言っても、商流上の位置(元請直、二次請け、三次請け以下)、単価水準、還元率の透明性、案件選択の自由度、教育投資の有無は企業ごとに大きく異なります。SES企業の商流別4類型と見分け方で整理しているとおり、同じ「SES企業」でも、実態はほとんど別の業種と言えるほど離れています。
分散が大きい母集団の平均値は、個々のケースを予測する力を持ちません。「業界の離職率」を調べる時間があるなら、「その会社の離職率」を聞く準備に使うほうが、意思決定の精度は上がります。
3. SES特有の離職ドライバー7分類と、その検証方法
ここからは、SESという働き方に固有の離職要因を整理します。重要なのは要因の列挙ではなく、それぞれが入社前・在籍中に検証可能かどうかです。検証できない要因を心配しても意思決定は改善しません。
3-1. 表2|離職ドライバー×検証可能な一次情報×確認タイミング
| # | 離職ドライバー | 確認できる一次情報 | 確認タイミング | 検証難易度 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 単価と給与が連動しない | 給与規程・評価制度の文書、賞与の算定根拠 | 面談〜内定後 | 中 |
| 2 | 案件を自分で選べない | 案件アサインのプロセス説明、辞退実績の有無 | 面談 | 中 |
| 3 | 商流が深く単価が低い | 元請比率、直請比率、主要取引先の説明 | 面談 | 高 |
| 4 | スキルが特定領域に固定される | 直近の配属実績、技術スタックの分布 | 面談 | 中 |
| 5 | 待機期間の扱いが不明確 | 就業規則の休業手当規定、待機実績の説明 | 内定後(労働条件通知書) | 低 |
| 6 | 指揮命令の所在が曖昧(偽装請負リスク) | 契約形態の明示、勤怠・指示系統の運用 | 面談〜配属後 | 中 |
| 7 | 帰属意識・相談先の不在 | 営業担当の同行頻度、面談の定例有無 | 面談 | 低 |
3-2. 「単価と給与が連動しない」が最も重い理由
7つのうち、離職判断に最も直結しやすいのが1番です。SESでは、エンジニアの単価が客先との取引で決まり、給与は自社の給与規程で決まります。この2つが制度的に接続されていない場合、単価が上がっても給与は上がりません。
ここには構造的な情報非対称があります。労働者派遣事業には、労働者派遣法第23条第5項に基づくマージン率の情報提供義務がありますが、準委任契約であるSESはこの義務の対象外です。つまり、SESでは「自分の単価がいくらで、そのうちいくらが自分に還元されているか」を法的に開示させる仕組みがありません。開示するかどうかは各社の方針に委ねられています。
したがって、単価の開示姿勢そのものが、その会社を見極める指標になります。詳しくはSESの給与構造と還元率の考え方およびSESエンジニアの単価相場で整理しています。
3-3. 「案件を選べない」は程度問題として確認する
「案件を選べるか」は0か1かではありません。実際には「複数提示されるが実質1択」「辞退はできるが待機扱い」「面談前に本人合意が必須」など、運用に幅があります。面談では「直近1年で、本人の辞退によって配属が変わった件数はどのくらいありますか」と件数で聞くのが有効です。抽象的な方針ではなく実績を聞けば、運用の実態が見えます。
3-4. 待機期間の扱いは労働条件通知書で確認できる
待機(次の案件が決まるまでの期間)中の給与の扱いは、就業規則および労働条件通知書で確認できます。労働基準法第26条の休業手当(平均賃金の60%以上)を適用するのか、通常どおり満額支給するのかは会社によって異なります。これは検証難易度が最も低い項目です。書面に記載があるかを確認するだけで済みます。
4. 2026年の制度変更が定着率に与える影響
2026年は、SESで働くエンジニアの処遇に関わる法改正が複数施行される年です。転職判断のタイミングにも影響するため、押さえておく価値があります。
4-1. 2026年10月1日:同一労働同一賃金の実効性強化
厚生労働省は2026年4月28日に改正省令・告示を公布し、2026年10月1日から施行されます。待遇差の説明義務の強化などが含まれます。直接の対象は労働者派遣ですが、SESにおける同一労働同一賃金の考え方で整理しているとおり、客先常駐という働き方全体に、処遇の説明責任を求める流れが波及します。
エンジニア側の実務的な意味は明確です。「なぜこの給与額なのか」を会社に説明させる正当性が、以前より強くなります。
4-2. 2026年10月:社会保険の適用拡大(賃金要件の撤廃)
短時間労働者の社会保険加入要件のうち、「月額賃金8.8万円以上」という賃金要件が2026年10月に撤廃されます(いわゆる「106万円の壁」の撤廃)。加えて企業規模要件も段階的に撤廃され、2027年10月に従業員36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上、2035年10月に全事業所へと広がる予定です。
フルタイムのSESエンジニアには直接の影響は小さいものの、副業・時短勤務・家族の就労を含めた世帯単位の可処分所得には影響します。SESエンジニアと社会保険の基礎も併せて確認してください。
4-3. 偽装請負リスクは「離職理由」であると同時に「法的リスク」
SESは準委任契約であり、指揮命令権は自社にあります。客先が直接業務指示を出している状態は、労働省告示第37号(37号告示)が示す区分に照らして偽装請負と判断されうる状態です。労働者派遣法第59条第2号は、無許可での労働者派遣に対し1年以下の懲役または100万円以下の罰金を定めています。
現場のエンジニアにとって、これは「指示系統が二重になって働きにくい」という体験として現れます。判断基準の詳細はSESの偽装請負判断基準で解説しています。
5. 入社前に確認できる「定着率シグナル」チェックリスト
ここまでの整理を、実際に手元で確認できる形に落とします。求人票・面談・書面の3段階に分けています。
5-1. 表3|段階別チェックリスト(24項目)
| 段階 | 確認項目 | 良いシグナル | 注意シグナル |
|---|---|---|---|
| 求人票 (応募前) |
給与レンジの幅 | 幅が明示され、決定要因の記載がある | 「300〜900万円」など幅が極端 |
| みなし残業時間 | 時間数と超過分の支払いを明記 | 記載なし、または45時間超 | |
| 賞与の記載 | 算定根拠または実績月数を明記 | 「業績による」のみ | |
| 勤務地の表記 | 「客先常駐」と明記 | 本社所在地のみ記載 | |
| 契約形態の明示 | 準委任/請負/派遣を明示 | 「業務委託」とだけ記載 | |
| 技術スタック | 具体的な言語・基盤名を列挙 | 「多数の案件あり」のみ | |
| 教育制度 | 予算額・対象・実績を記載 | 「研修充実」のみ | |
| 平均勤続年数 | 数値を開示 | 非開示 | |
| 面談 (選考中) |
単価の開示方針 | 本人に開示、または開示ルールを説明 | 「答えられない」で終わる |
| 還元率の考え方 | 算定式または目安を説明 | 質問自体を避ける | |
| 案件辞退の実績件数 | 件数で回答 | 「基本的に選べます」のみ | |
| 元請・直請の比率 | おおよその比率を回答 | 取引先を一切開示しない | |
| 待機時の給与 | 規程を提示 | 「そもそも待機は出ない」で終わる | |
| 直近1年の退職者数 | 人数と主な行き先を回答 | 「把握していない」 | |
| 評価面談の頻度 | 回数と評価者を明示 | 定例がない | |
| 営業担当の同行頻度 | 月次など具体的頻度 | 「必要に応じて」のみ | |
| 配属先の決定プロセス | 本人合意の位置づけを説明 | 会社決定と明言 | |
| 書面 (内定後) |
労働条件通知書の交付 | 内定時に交付 | 入社日まで出ない |
| 就業規則の閲覧 | 入社前に閲覧可 | 入社後のみ | |
| 休業手当の規定 | 条文が存在 | 記載なし | |
| 昇給の規定 | 時期と決定方法を明記 | 「随時」のみ | |
| 賞与の規定 | 支給時期・算定要素を明記 | 記載なし | |
| 秘密保持・競業避止 | 範囲と期間が合理的 | 期間・地域が無制限 | |
| 労働時間の精算幅 | 下限・上限と精算単価を明記 | 精算条件の記載なし |
5-2. チェックリストの使い方——全項目を満たす会社は存在しない
24項目すべてが「良いシグナル」になる会社は現実にはほとんどありません。使い方は減点法ではなく、「注意シグナルが自分にとって致命的かどうか」を仕分けることです。
たとえば、単価開示に応じない会社でも、給与テーブルが明快で昇給規程が具体的なら、結果として納得できる場合があります。逆に、単価を開示していても評価制度が曖昧なら、開示は形だけということもあります。項目間の整合性を見るのが実務的です。
株式会社HLTでは、SESで働くエンジニアのキャリア相談を受け付けています。求人票や労働条件通知書のどこを見れば処遇の決まり方が読み取れるのか、上記のような項目を一緒に確認していきます。
6. 面接・カジュアル面談で聞くべき7つの質問と回答の読み方
質問そのものより、回答の粒度が情報になります。以下は、答えの質で会社を判別しやすい質問です。
6-1. 表4|7つの質問と回答の評価軸
| # | 質問文 | 期待する回答の粒度 | この質問でわかること |
|---|---|---|---|
| 1 | 「私の単価は、本人に開示されますか。開示の運用ルールを教えてください」 | 開示可否と、その根拠となる社内ルール | 処遇の透明性と説明責任の有無 |
| 2 | 「直近1年で、本人の辞退により配属が変わったのは何件くらいですか」 | 件数(概数でも可) | 案件選択の実効性 |
| 3 | 「昇給は年に何回、何をもとに決まりますか。前回の平均昇給額は」 | 回数・評価要素・金額感 | 給与が上がる仕組みの有無 |
| 4 | 「待機が発生した場合、給与はどう扱われますか。規程の該当条文を見せてください」 | 条文の提示 | 書面と運用の一致 |
| 5 | 「直近1年の退職者は何名で、主にどこへ転職されましたか」 | 人数と転職先の傾向 | 離職の中身(ステップアップか離脱か) |
| 6 | 「客先での業務指示は、どなたから出る運用ですか」 | 指揮命令の所在の明確な説明 | 偽装請負リスクへの意識 |
| 7 | 「配属後、自社の誰と、どのくらいの頻度で接点がありますか」 | 担当者の役割と頻度 | 孤立を防ぐ体制の有無 |
6-2. 「答えられない」も情報である
これらの質問に即答できないこと自体は、必ずしも悪いシグナルではありません。判別ポイントは「答えられない」と正直に言い、後日回答する姿勢があるかです。曖昧な一般論でその場をしのごうとする場合、入社後に処遇の説明を求めたときも同じ対応になる可能性が高いと考えられます。
6-3. 質問する順番にも意味がある
単価や給与の質問を最初に出すと、面談全体が条件交渉の雰囲気になりがちです。実務的には、①配属プロセス → ②評価と昇給 → ③単価開示 → ④待機時の扱いの順で聞くと、話の流れとして自然になります。面談の準備についてはSES面談の準備と進め方も参考にしてください。
7. すでに在籍している場合の「残る・動く」判断フレーム
離職率の話は、これから入る人だけの問題ではありません。すでにSESで働いている場合、「今の会社に残るか、動くか」の判断が必要になります。
7-1. 3つの軸で現状を採点する
感情ではなく、次の3軸で採点すると判断がぶれにくくなります。
- ①金銭軸:直近2年で年収は上がったか。上がった場合、その根拠を会社は説明できたか。
- ②スキル軸:直近2年で、職務経歴書に新しく書ける行が増えたか。増えていない場合、それは案件の問題か、自分の選択の問題か。
- ③選択肢軸:次の案件を選べる余地は広がったか、狭まったか。
3軸のうち2つ以上が2年間横ばい以下なら、環境要因の可能性が高いと考えられます。SESエンジニアのキャリアパスで、選択肢の広げ方を整理しています。
7-2. 動く前に社内でできること
転職は選択肢の1つであって、最初の手段である必然性はありません。社内でできることを先に試すほうが、コストは低く済みます。具体的には、単価の確認、次回更新時の条件見直しの相談、上流工程への配置転換の希望提出、資格取得支援の利用などです。
これらを試したうえで反応が変わらなければ、そのこと自体が判断材料になります。「相談したが動かなかった」という事実は、想像で悩むより明確な根拠です。
7-3. 契約更新のタイミングを起点に考える
SESでは3か月・6か月といった契約更新サイクルがあります。更新のタイミングは、条件を見直す自然な機会です。更新の実務についてはSES契約期間と更新の実務で解説しています。
株式会社HLTでは、SESエンジニアが単価や評価の見直しに向けて準備を進める支援を行っています。一般に、現状の整理・実績の言語化・希望条件の優先順位づけを一緒に行うことで、更新面談や社内相談の場で自分の考えを伝えやすくなります。
8. よくある質問(FAQ)
Q1. 結局、SESの離職率は何%と考えればよいですか
公的統計で確認できるのは「情報通信業の離職率10.2%(令和6年)」までです。「SES業」という統計区分は存在しないため、業界固有の離職率を示す一次情報はありません。個社の数字を面談で確認するほうが、意思決定には有効です。
Q2. 情報通信業の離職率が全産業平均より低いのに、なぜ人手不足なのですか
離職が多いからではありません。情報通信業は入職率11.2%・離職率10.2%で入職超過(+1.0ポイント)であり、人は純増しています。それでも不足が続くのは需要側が伸びているからです。経済産業省「IT人材需給に関する調査」は2030年時点で高位シナリオ79万人、中位45万人、低位16万人の不足を試算しています。需要側の裏づけとして、IPA「DX動向2026」(2026年7月30日公開)では、DX推進人材の量について「やや不足」「大幅に不足」と回答した企業が合計85.5%でした。辞める人が多いのではなく、増え方が需要に追いついていないという構図です。
Q3. 離職率を開示しない会社は避けるべきですか
開示義務のある指標ではないため、非開示それ自体は違法でも異例でもありません。判断材料になるのは、非開示という事実より非開示の説明の仕方です。「集計していない」のか「方針として出していない」のかで意味が変わります。
Q4. 新卒でSESに入るのはリスクが高いですか
一律には言えません。リスクの中身は「特定領域に固定されて市場価値が伸びない」ことであり、これは配属実績と教育制度で事前にある程度確認できます。第5章の求人票チェック項目のうち「技術スタック」「教育制度」「配属先の決定プロセス」を重点的に確認してください。
Q5. 待機になったら給与は出ますか
会社の規程によります。労働基準法第26条の休業手当(平均賃金の60%以上)を適用する会社と、通常どおり満額を支給する会社があります。入社前に労働条件通知書と就業規則で確認できる項目ですので、想像で判断せず書面で確認してください。
Q6. 単価を教えてもらえないのは違法ですか
違法ではありません。労働者派遣にはマージン率の情報提供義務(労働者派遣法第23条第5項)がありますが、準委任契約であるSESはその対象外です。したがって、開示するかどうかは各社の方針次第となります。だからこそ、開示姿勢が会社の性格を映す指標になります。
Q7. 2026年の法改正で、SESの働き方は変わりますか
2026年10月1日施行の同一労働同一賃金に関する改正は、待遇差の説明責任を強める方向の変更です。2026年10月の社会保険適用拡大(賃金要件の撤廃)は、短時間勤務者や副業を持つ人の手取りに関わります。いずれも「処遇の根拠を説明させやすくなる」方向の変化と捉えられます。
9. まとめ
- 厚労省「令和6年 雇用動向調査」では、情報通信業の離職率は10.2%で全産業平均14.2%を4.0ポイント下回る。「業界全体が辞めやすい」という前提は、公的統計では支持されない。
- さらに入職率11.2% > 離職率10.2% の入職超過(+1.0pt)であり、統計上この産業では人が純増している。人手不足の主因は流出ではなく、需要の伸びに供給が追いついていないこと。
- 「SES業」という統計区分は存在せず、業界固有の離職率を示す一次情報はない。見るべきは業界平均ではなく個社。
- SES固有の離職ドライバーは7分類。うち「単価と給与が連動しない」が最も重く、準委任契約はマージン率開示義務の対象外という構造的な情報非対称が背景にある。
- 個社の見極めは、求人票8項目・面談9項目・書面7項目の計24項目で検証できる。全項目を満たす会社を探すのではなく、注意シグナルが自分にとって致命的かを仕分ける。
- 2026年10月には同一労働同一賃金の実効性強化と社会保険適用拡大が施行される。いずれも処遇の説明を求めやすくなる方向の変化。
SESのキャリアについてのご相談
株式会社HLTでは、SESで働くエンジニアのキャリア相談を受け付けています。今の環境で条件を見直すべきか、環境を変えるべきか——この記事のチェック項目に沿って現状を一緒に整理します。判断を急かすことはしませんので、状況の棚卸しからご相談ください。
参考文献・出典
- 厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」(2025年公表)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-2/index.html(最終アクセス:2026年8月21日)
- 経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年4月)https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/(最終アクセス:2026年8月21日)
- 厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金について」(改正省令・告示 2026年4月28日公布/2026年10月1日施行)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html(最終アクセス:2026年8月21日)
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026」(2026年7月30日公開)https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/dx-trend-2026.html(最終アクセス:2026年8月21日)
- 労働省告示第37号(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準)/労働者派遣法第23条第5項・第59条第2号










