SES業界の離職率は「3年以内で25〜30%程度」が目安と言われ、IT職種のなかでも高い水準にあると指摘されています。厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」によれば、大卒新規就職者全体の3年以内離職率はおおむね3割前後で推移しており、SES業界全体の水準はこれと同程度ですが、企業規模・体質による格差が非常に大きい点が特徴です。本記事では、SESの離職率が高いと言われる7つの理由を構造から分析し、エンジニア・企業双方の視点から具体的な改善策を解説します。離職率の低い優良SES企業の見極め方と、面接で聞くべき7つの質問もあわせてお伝えします。
【この記事でわかること】
- SES業界の離職率の目安と公的統計の見方
- 離職率が高くなる7つの構造的理由
- エンジニア・企業それぞれの具体的改善策
- 離職率の低い優良SES企業の見極め方
- 面接で必ず確認すべき7つの質問
SES業界の離職率の現状|データで見る実態
SES業界の離職率の目安とIT業界比較
SES業界の離職率について、公的統計では「SES」という区分での集計は存在しないため、正確には「業界で一般に言われる目安」と「情報通信業全体の公的統計」を分けて理解する必要があります。厚生労働省「雇用動向調査」では、情報通信業の離職率は全産業平均を下回る水準で推移していますが、SES業態に限れば企業規模による差が大きいと業界内で広く指摘されています。以下は業界で一般に言われる目安を整理した表です。
| 業種・職種 | 3年以内離職率(目安) | 傾向 |
|---|---|---|
| SES業界(全体) | 25〜30%程度 | 正規雇用全体の平均(約3割)と同水準だが企業間格差が大きい |
| SES企業(小規模) | より高くなりやすい | フォロー・教育投資が手薄になりやすい |
| SES企業(大手・体制充実) | より低く抑えられる傾向 | 研修・面談・評価制度の整備状況が影響 |
| IT事業会社(社内SE) | 相対的に低い傾向 | 帰属意識・評価の納得感を得やすい |
※ 上記はいずれも業界で一般に言われる目安であり、個々の企業の実態は大きく異なります。だからこそ、後述する「企業ごとの定着データの開示姿勢」を確認することが重要です。
年代別・経験年数別の離職傾向
SES業界の離職は、特定のタイミングに集中しやすいと言われています。一般に指摘されるのは次の2つの山です。
- 新卒1〜3年目:スキルミスマッチ・キャリアビジョンの未形成・現場配属後のギャップ(いわゆる配属のミスマッチ)が主因になりやすい時期です。
- 経験3〜5年目:一定のスキルを習得し、転職市場での評価が高まる時期です。自身の市場価値と現在の待遇の差を意識しやすくなります。
とくに経験3〜5年目は、単価と給与の関係を本人が把握しているかどうかで、納得感が大きく変わります。自分の単価相場を知りたい方は「SESの単価相場」の解説記事も参考にしてください。
SESの離職率が高い7つの理由
理由①:キャリアパスの不透明性
SES業界における最大級の離職要因は「5年後・10年後のキャリアが見えない」という不安です。日本の人事部「人事白書」の調査では、常駐型ビジネスを行う企業の46.6%が「自社への帰属意識の醸成が難しい」と回答しており、その背景としてキャリアビジョンの共有不足が挙げられています。
SESの特性上、エンジニアは数ヶ月〜年単位で異なる客先に常駐するため、特定分野でのスペシャリスト化が難しく、「なんとなくいろいろできるが、強みがない」という状態に陥りがちです。30代以降になると、この曖昧なポジションが将来への不安に直結します。
理由②:給与・評価制度の不透明性
SES企業の収益は「エンジニアの稼働単価 × 稼働時間」で決まりますが、この単価がエンジニア本人に開示されないケースが多く、自分がどれだけ会社に貢献しているか実感しにくい構造があります。単価が開示されないと、「単価が上がっても給与に反映されているのか分からない」という不信感が蓄積しやすくなります。
また、客先での評価が高くても、所属会社の評価制度が曖昧なために昇給につながらないケースも指摘されています。株式会社HLTでは、単価と評価の考え方をエンジニアと共有し、単価見直しの準備を一緒に整理する支援を行っています。一般に、自分の案件単価と市場相場を把握しているエンジニアほど、交渉・キャリア判断がしやすくなります。
理由③:客先常駐による帰属意識の低下
SESエンジニアは所属企業ではなく客先に常駐するため、「自分はどこの会社員なのか」というアイデンティティが曖昧になりやすい問題があります。所属会社の同僚と会う機会が少なく、会社からのフォローが手薄な場合、孤独感や疎外感を覚えるエンジニアも少なくありません。
とくに初めてSESに入社した新人エンジニアは、入社直後から客先常駐となるケースも多く、「研修もなく現場に放り込まれた」という感覚から早期離職につながることがあります。
理由④:スキルアップ機会の格差
SES案件では客先のニーズに合わせた業務が中心となるため、エンジニア自身が学びたいスキルを身につけられないケースがあります。単価の低い案件では、単純作業・テスト業務・保守運用が中心で、最新技術に触れる機会が少ない傾向があります。
「数年間同じ作業をしてきたが、市場価値が上がっていない」という状況は、モチベーション低下と離職リスクを高める大きな要因です。IPA(情報処理推進機構)の各種調査でも、IT人材のスキル変革(リスキリング)の必要性が繰り返し指摘されています。スキルアップの進め方は「SESエンジニアのキャリアアップ戦略」で詳しく解説しています。
理由⑤:ワークライフバランスへの不満
客先常駐の場合、客先のルールや残業文化に従わざるを得ない面があります。所属会社がどれだけ働き方改革を推進していても、客先が長時間労働の文化であれば残業が常態化しやすくなります。客先が遠方の場合は長時間通勤となり、生活の質が低下します。
年次有給休暇についても、厚生労働省「就労条件総合調査」では取得率は全産業で6割台まで上昇傾向にあるものの、SESの現場では「客先の状況を気にして取得しづらい」と感じるエンジニアが一定数いると指摘されています。有給休暇の権利と取り方は「SESエンジニアの有給休暇ガイド」を参照してください。
理由⑥:案件と希望のミスマッチ(いわゆる配属ガチャ)
「どの案件に配属されるかで働きやすさが決まる」——いわゆる配属ガチャは、SES離職の代表的な引き金です。希望技術と異なる案件への長期アサイン、スキルレベルと合わない案件、人間関係の難しい現場などが続くと、所属会社への不信感に転化します。案件選択の希望をどの程度反映してもらえるかは、企業選びの段階で確認すべき最重要ポイントのひとつです。
理由⑦:教育・フォロー体制の不足
研修や定期面談などのフォローが乏しい企業では、現場で発生した小さな不満・不安が可視化されないまま蓄積し、退職の申し出で初めて表面化するケースが目立ちます。逆に、定期的な1on1や営業担当のフォローがある企業では、案件変更・単価交渉・スキル計画といった打ち手を早期に検討できます。
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エンジニアが離職を決める代表的な理由
厚生労働省「雇用動向調査」では、転職入職者が前職を辞めた理由として「給料等収入が少なかった」「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」「職場の人間関係が好ましくなかった」などが毎年上位に挙がります。これをSESの文脈に当てはめると、離職理由は次のように整理できます。
- 給与・待遇への不満:「頑張っても給与が上がらない」「単価が上がっても給与に反映されない」
- キャリアの停滞感:「成長できる案件が得られない」「スキルの幅が広がらない」
- 職場環境・人間関係:「客先の人間関係が辛い」「所属会社との接点が少なく孤立感がある」
- 業務内容への不満:「やりたい仕事・技術に携われない」「単純作業しか任せてもらえない」
- ワークライフバランス:「残業が多い」「通勤時間が長い」
注目すべきは、給与への不満とキャリアの停滞感が別々の問題ではなく連動している点です。単純な給与アップだけでなく、「成長できる環境」の整備が離職防止に不可欠であることを示しています。給与を上げる具体的な方法は「SESエンジニアの給与を上げる方法」で解説しています。
SES企業が実施している離職率改善策
待遇面の改善:給与・単価の透明化
先進的なSES企業では、エンジニアの客先単価を一定程度開示し、単価アップが給与に反映されやすい「単価連動型」の給与制度を導入する例が増えています。たとえば「月単価が一定ラインを超えた場合に基本給を増額する」といったルールを明文化する方式です。単価と給与の関係が見えることで、エンジニアは自分の市場価値と処遇を対応づけて理解でき、納得感が高まります。
キャリア支援:明確なキャリアパスの提示
離職防止に効果的な施策のひとつが「3年後・5年後のキャリアパスを具体的に示す」ことです。マネジメント職とスペシャリスト職の複線型キャリアパスを設け、スペシャリストでも管理職相当の処遇に到達できる制度を整備する企業が増えています。「担当領域を深めてリードエンジニアへ」「資格取得と上流工程経験を重ねてアーキテクトへ」といったロードマップを入社時から共有するアプローチが効果的です。
コミュニケーション強化:定期面談の仕組み化
客先常駐中のエンジニアが孤立しないよう、所属会社との接点を定期的に設ける取り組みが重要です。定例の1on1ミーティング(オンライン可)、勉強会・社内コミュニティの運営などが代表例です。問題が深刻化する前に案件変更や労働環境の是正を検討できることが、離職防止に直結します。
離職率の低い優良SES企業の見極め方
求人票・企業HPで確認すべき7項目
| 確認項目 | 優良企業の特徴 | 注意が必要な場合 |
|---|---|---|
| 平均年収・給与レンジ | スキル・経験年数別に明示 | 「応相談」のみで数値なし |
| 平均残業時間 | 実績値を開示・残業代全額支給 | 上限ギリギリの表記のみ |
| 資格取得支援 | 費用補助・報奨金など制度を明示 | 制度なし・「自己研鑽を奨励」のみ |
| 案件選択の自由度 | 希望技術・業種を反映する運用を説明できる | 「会社が決定」で本人希望を聞かない |
| フォロー面談 | 定期面談の頻度・内容を明示 | 「何かあれば連絡」のみ |
| 定着データ | 定着状況の数値を自ら開示 | データ開示なし・質問への回答が曖昧 |
| キャリアパス | 具体的なロードマップあり | 「実力次第」「頑張れば評価」のみ |
会社選びの全体像は「SES企業の選び方ガイド」でさらに詳しく解説しています。
面接で必ず確認すべき7つの質問
- 「エンジニアの定着状況(3年・5年)を数値で教えてください」
- 「客先常駐中の担当者との面談はどのくらいの頻度で行われますか?」
- 「案件選択の際、技術や業種の希望はどの程度反映されますか?」
- 「資格取得支援制度の具体的な内容(補助対象・条件)を教えてください」
- 「単価が上昇した場合、給与への反映ルールを教えてください」
- 「直近で離職した方の主な理由をどのように把握していますか?」
- 「スペシャリスト・マネジメント双方のキャリアパスの具体例を教えてください」
この7つの質問に対して、具体的な数値・制度・事例をもって回答できる企業は、エンジニアの定着に本気で取り組んでいる可能性が高いといえます。「ケースバイケース」「個人差があります」といった曖昧な回答が多い場合は注意が必要です。面接対策全般は「SES面談の準備ガイド」も参考にしてください。
エンジニア自身ができる「辞めない・後悔しない」ための5つのアクション
離職率の問題は企業側の構造要因が大きいものの、エンジニア自身の打ち手で「不本意な離職」を減らすことは可能です。次の5つのアクションが有効です。
①自分の案件単価と市場相場を把握する
単価を知らないままでは、待遇の妥当性を判断できず、不満だけが募ります。所属会社に単価の開示や還元の考え方を確認し、職種別の相場情報と照らし合わせましょう。相場を知っていること自体が交渉材料になります。
②キャリアゴールを言語化して面談で共有する
「3年後にクラウド設計を担えるようになりたい」「上流工程に携わりたい」など、目指す方向を具体的な言葉にして定期面談で共有しておくと、案件アサインの精度が上がり、配属ミスマッチを減らせます。
③現場の違和感は小さいうちに記録・相談する
過重労働・ハラスメント・契約と異なる業務内容などの違和感は、日付とともにメモを残し、早めに自社担当者へ相談しましょう。記録があるほど、案件変更や是正の交渉がスムーズになります。
④学習・資格取得を「単価の根拠」として積み上げる
資格や新技術の実務経験は、単価見直し・案件選択の交渉材料になります。経済産業省の調査でもIT人材の需給ギャップは中長期的に続くと予測されており、需要の高いスキル(クラウド・セキュリティ・データ活用など)への投資は回収しやすい状況が続いています。
⑤「辞める前に変える」選択肢を検討する
不満の原因が案件にあるなら案件変更、会社にあるなら転職と、原因に応じて手段を選びましょう。感情的な退職は、次の職場選びの精度も下げてしまいます。在籍のまま案件変更を申し出る・キャリア相談を利用するなど、「辞める」以外の選択肢を先に試すのが得策です。
株式会社HLTの離職率問題への向き合い方
株式会社HLTは、SES業界の離職率の高さが「単価・評価の不透明さ」「キャリアの見えなさ」「フォロー不足」という構造要因から生まれると考え、エンジニアのキャリア支援に取り組んでいます。具体的には、次のような支援を行っています。
- 単価・評価の考え方の共有:単価と処遇の関係をエンジニアと一緒に整理し、単価見直しの準備(実績の棚卸し・相場の確認)を支援します。
- キャリア面談:目指す方向(スペシャリスト・上流工程・資格取得など)を一緒に言語化し、案件選びに反映できるよう支援します。
- 学習・資格取得の相談:経済産業省・IPAの資料等の一次情報も参照しながら、市場価値につながる学習計画を一緒に考えます。
一般に、キャリアの現在地と目標が言語化されているエンジニアほど、案件のミスマッチが起こりにくく、単価交渉や転職判断も有利に進めやすくなります。福利厚生・待遇の確認ポイントは「SESエンジニアの福利厚生ガイド」もあわせてご覧ください。
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SES離職率に関するよくある質問(FAQ)
Q1. SES業界の離職率は本当に高いのですか?
A. 業界で一般に言われる目安では、SES業界の3年以内離職率は25〜30%程度とされ、社内SEなどのIT事業会社と比べると高い傾向があります。ただし公的統計に「SES」という区分はなく、実態は企業によって大きく異なります。定着データを自ら開示できる企業かどうかが、最も確実な見極めポイントです。
Q2. SES企業の離職率を事前に調べる方法はありますか?
A. 企業の採用ページや就職口コミサイトで確認する方法が一般的です。もっとも確実なのは、面接で「定着状況の数値」を直接質問することです。具体的な数値を回答できる企業は、データを把握・管理している証拠であり、定着改善に取り組んでいる可能性が高いといえます。
Q3. 離職を防ぐためにエンジニア自身ができることは何ですか?
A. もっとも効果的なのは「入社前に自分のキャリアゴールを明確にしておくこと」です。「3年後にクラウド系資格を取得して上流工程に携わりたい」のように具体的なゴールを持ち、面接でその実現をサポートできる環境かどうかを確認しましょう。入社後は、定期面談を活用して小さな不満のうちに相談することが重要です。
Q4. 離職率が高いのはエンジニアの問題ですか、会社の問題ですか?
A. 構造的な問題は企業側にある場合がほとんどです。キャリアパスの不透明性・評価制度の不整備・コミュニケーション不足といった会社側の課題が離職の主因です。ただし、エンジニア自身がキャリアゴールを明確にし、それを実現できる環境を選ぶことも離職防止には重要です。
Q5. 転職を繰り返すと評価が下がりますか?
A. 短期間(1年未満)での転職の繰り返しは評価に影響する場合があります。ただし、スキルアップや明確なキャリアビジョンに基づいた転職であれば、数年ごとの転職はIT業界では珍しくありません。重要なのは「なぜ転職したのか」を一貫して説明できることです。
Q6. 離職率が低いSES企業の具体的な特徴を教えてください。
A. 代表的な特徴は次の5点です。①定着状況の数値を自ら開示している、②単価と給与の関係(還元の考え方)を説明できる、③定期面談などのフォローの仕組みがある、④資格取得支援・研修制度が整っている、⑤スペシャリストとマネジメントの複線型キャリアパスがある。この5つが揃う企業は、エンジニアを長期的なパートナーとして扱っている可能性が高いといえます。
Q7. SES業界全体の離職率は今後改善されていきますか?
A. 改善の方向にあると考えられます。経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年)では2030年に最大79万人のIT人材不足が予測されており、SES企業にとって優秀なエンジニアの確保・定着は経営課題そのものです。給与水準の引き上げ・透明な評価制度・キャリア支援の充実など、働きやすい環境整備は業界全体で進んでいく流れにあります。
まとめ
SESの離職率が高いと言われる主な理由は、①キャリアパスの不透明性、②給与・評価制度の不透明性、③帰属意識の低下、④スキルアップ機会の格差、⑤ワークライフバランスの問題、⑥案件と希望のミスマッチ、⑦教育・フォロー体制の不足の7点です。これらは構造的な問題であり、企業側の制度整備と、エンジニア側の企業選び・キャリア設計の両輪で大きく改善できます。
エンジニアとしては、入社前に「定着データの開示姿勢」「フォロー面談の頻度・内容」「キャリアパスとスキルアップ支援の具体性」の3点を必ず確認しましょう。
株式会社HLTでは、SESエンジニアのキャリア支援に取り組んでいます。SESでのキャリアに不安を感じている方、転職を検討している方は、無料キャリア相談をご活用ください。
参考文献・出典
- 厚生労働省「雇用動向調査」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/9-23-1.html(最終アクセス:2026年7月16日)
- 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137940.html(最終アクセス:2026年7月16日)
- 経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年) https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/(最終アクセス:2026年7月16日)
- IPA(情報処理推進機構)各種調査 https://www.ipa.go.jp/(最終アクセス:2026年7月16日)
- 日本の人事部「人事白書」 https://jinjibu.jp/research/(最終アクセス:2026年7月16日)










